「愛の不時着」~ヒットの秘密を考えてみた~


「愛の不時着」、このドラマのヒット要因が分かった気がします。(まだ6話までだけど)
➀予想外の展開。この次どうなるのか、という先の見えないstoryの作り方が絶妙。
1話ごとにピンチが訪れる。そのハラハラ感とワクワク感をかきたてられる。このコロナ禍の中での欠けていた感情を引き出される快感たるや、ハンパない。

「冬のソナタ」の韓ドラ初体験の「ハラハラ」を思い出しました。
韓ドラ結構観たけどこんなの初めて、という視聴者側をリサーチした感もあるけれど、作りての巧みな戦略に脱帽。

➁キャラクターがすごく魅力的で、ソン・イェジン演ずるユン・セリは「南の嫌味な女」になりそうなところ、生きてゆく上でのしたたかさをいかんなく発揮する。
上から目線になるところを、生来持っている「好奇心」によって、周囲と打ち解けてゆくユニークなキャラ。
けた外れに恵まれた環境に身を置き、自信に満ち溢れているのに、実は孤独感の強い人で、その隠れた感情がヒョンビン演じるジョンヒョクの前に現れる。

そのセリの激しい感情の揺れ動きに戸惑いながら、惹かれてゆくヒョンビン演じるジョンヒョクが何よりいい。
ジョンヒョクの寡黙で一見不愛想の下に純粋で温和で、そして(ここからが重要)極めて鋭利な判断能力・洞察力、強靭な精神力・体力、そしてセリへの思いが無意識に表現される表情が(視聴者にとって)とても愛おしい。
これから先ヒョンビンにとってこれ以上にハマるキャラクターがあるだろうか、とそんな余計な心配までしてしまう。

そして、私が気に入った脇キャラは、ヒョンビンの婚約者ダン(ソ・ジヘ)のオンマ(チョン・へジン、なんと「パラサイト」のオンマ)とヒョンビンの部下ピョ・チス(ヤン・ギョンウォン)。
ダンオンマの迫力、周囲の思惑を一切無視した、ゴーイングマイウェイ感が最高。
周囲を黙らせる能力、滑稽さを笑わせない迫力、ジェンダーを超越したこのキャラは、「北の女性」の頂点として描かれていると思います。
誰にも愛される中高年女性をはなっから拒否しているその佇まいに、一種の「あこがれ感」すら起こさせます。(韓国の樹木希林、と思う。個人の感想です)

ピョ・チスはジョンヒョクの部下で曹長、セリと何かと反目しているのだけど、どこか憎めないキャラです。
演じたヤン・ギョンウォンは、このドラマで好感度・知名度が急上昇したらしい。
いや~、そうだろうと思います。
冒頭1話の逃げてゆくユン・セリを撃ってしまい、その後のセリとの掛け合いは、漫才かと思うくらい面白くて、役者としての技量を感じます。

ソン・イェジンも上手い女優なんだと再認識しました。
どんな役を演じても、この人の魅力が滲み出るようになる。
キレイなのだけど、冷たくなく、愛らしく、透明感があり、明るく、周囲を和ませるものを持った人。

どんな主演男優と共演しても、ぴったりと合ってしまう恐るべき女優、な気がします。