権力という魔物 ~「奇皇后」より~


全51話の残すところあと10話と少しです。
大悪党のヨンチョル(チョン・グクファン)が倒され、皇后タナシルリ(ペク・ジニ)が処刑され、キ・ヤン(ハ・ジウォン)の養父ペガン(キム・ヨンホ)が丞相(昔中国で天子を助けた最高官位)になるも、他の長官たちが名誉職についたことでペガンの遺恨を残します。

ヨンチョルを倒すこと、その目標で一致団結していたワン・ユ(チュ・ジンモ)はじめ高麗人の集団と皇太后(キム・ソヒョン)たち。
あっという間にそのほころびが露見します。

皇太后はキ・ヤンが高麗出身であり、その子が元の王になることが許せない、という感情が沸々と湧いてきます。
なにより、ヨンチョルを倒した際のヤンの力、頭脳を認めたうえで、その力の恐ろしさも感じてもいました。
皇太后はヤンを皇后にしたい皇帝であるタファン(チ・チャンウク)を押さえ、ペガンの姪バヤンフト(イム・ジュウン)を皇后に迎えます。

ペガンの甥タルタル(キム・ジハン)が、ペガンの視野狭窄な行動に少しずつ距離をとり始めます。
タルタルはヤンの知性と行動力に惹かれ、元マンセーでも、皇太后マンセーでもなく、中立の立場を貫くことになってゆきます。

ヨンチョル丞相は、強い軍人で、統率力と知力も兼ね備えた人物でした。
ところが、その権力に酔いしれるようになり、賄賂を受け取り、隠し財産まで持ち自分の一族のためだけに政を行うようになってしまいました。
皇帝(タファンの父)を殺すことも平然と行い、娘タナシルリを皇后に据え、タファンを傀儡にし、意のままに国を動かすことができる人物になってしまったのです。

「この世をばわが世と思う望月の欠けたることなしと思えば」
(「この世は 自分(道長)のためにあるようなものだ 望月(満月)のように 何も足りないものはない」という意味)
(wikipediaより)

ヨンチョルの気持ちもこんな感じだったことでしょう。
でも、ついに終わるときがきます。

それは、丞相の次のポジションにいる人達、長官たちが「ヨンチョル亡き後」に登る階段を見据えること、それが現実になるよう計画したヤンの作戦勝ちでした。
人の「欲」を利用したなかなかしたたかなものでした。
その後長官たちがヨンチョルを亡きものにした最功労者ヤンの元に「賄賂」をもって集まるのを冷たい目でみる皇太后。

タナシルリを倒すことで結びついていたヤンと皇太后はその目的の後は、なんの「利」もなく、なんの目的も感情もなく、今やヤンは皇太后にとっては目の上のたんこぶでしかなくなっていました。
皇太后のもともと持っていた「欲」、後宮を牛耳るという、権力欲が出てきたのです。

ヤンは息子を皇帝にすること、貢女(高麗から元に売られてくる女性)たちを救うこと、そのために権力を握ることを決意します。
タナシルリからのバヤンフト、タファンはそれでもヤンを一途に望みます。
権力を握る為に奔走するヤンに、ちょっと偉そうにイラっとするタファン、なんだかんだで一番変わったタファン。
あと約10話が楽しみです。