「帝一の國」を考えた

今月21日に地上波で放送された「帝一の國」、去年、偶然鑑賞してその面白さに感動。映画館に3回も観に行きました。
何一つ無駄なシーンがなく、「予定調和」と見せながら、少しづつずらしてゆく着地点のひねり、現実世界の闇を混ぜるのだけど、根底にあるのは『ユートピア』、「楽しませる」ことを徹底的に考えたまさしくエンタテイメントな映画です。原作を全く知らなくても楽しめること請け合います。

まず菅田将暉がスゴイ。主役の『赤場帝一』のマンガチックで現実離れした役をものすごくリアルに演じています。最初から最後までのテンションの高さに感心します。
この人はただのイケメンの役をやりたくないのでしょう。自分の演技力を試したい気持ちが強い人だと思います。一ひねりも二ひねりもしてくる人です。変なヘアスタイルをしたり、変わった服を着たりと、「変わっている自分」を意識しているのだと思います。
「イマドキ」を体現している役者と言っていいでしょう。唯一無二の存在に上り詰めているところなのではないか、と思います。

「大鷹弾」を演じて注目を浴び、去年の大ブレイクを果たした竹内涼真。案外爽やかな二枚目、というポジションが「空いていた」ことに気付きました。
昔で言えば「ホームドラマ」でヒロインの相手役、ちょっと昭和的な匂いのする若手俳優が案外いないのです。
「ひよっこ」で有村架純の相手役でお茶の間に名前を知られ、「過保護のカホコ」でツンデレのかっこいい男子を演じ、とどめの「陸王」です。
大鷹弾は、竹内涼真のステップになりました。
この「大鷹弾」は、フツーで言えばヒーローです。真っ直ぐで、純粋で、努力家で、いってみれば非の打ちどころがない男子。
「帝一」との関係は、帝一の欲に対する弾の無欲、というような対比を描きます。
色々な人と交わり、もともとあった行動力に加えて成長する「弾」は光の当たる場所を歩いていきます。

この「帝一の國」の最大の面白さは、自分の国をつくる、という帝一の目標が期せずして、「海帝高校」の民主化が実現する、ということだと思うのです。
(選挙で)氷室ローランド(間宮祥太郎)が弾を引き入れようとして失敗、帝一の父とローランドの父が敵対していることから、帝一もあっさりと、森園(千葉雄大)陣営に寝返ります。
最大の山場は、なんといっても「マイムマイム事変」、このくだりは、「抱腹絶倒レベル」です。
「金」で票を買いだした氷室ローランド陣営に対抗すべく、森園陣営が「官軍」であることを知らしめるために「マイムマイム」を踊る、というだけの話なのですが、単純なただの踊りに込められた「輪」は、すごい効果を発揮します。
「青春の証明」のような「マイムマイム」はやはり清廉潔白でなければ踊れない、そんな踏み絵的効果もありました。
買収されたお金を返してまで踊りたい「マイムマイム」は政治的な意味でも高校の民主化を実現するきっかけにもなったのです。
森園が生徒会長になり、生徒会選挙は「全校生全員参加」が宣言されます。
そうして、大団円で終わるかと思わせておいてまたラストシーンが秀逸です。

「帝一の國」は、帝一が「自由にピアノを弾ける自分の国」を作りたい、というだけだったのですが、生徒会選挙で弾に負けます。
最期の最後、帝一自らが、弾に票を入れた、という形で「弾」に花を持たせた帝一は、弾のためにピアノを弾きます。
何て言う曲?と問う弾に光明(志尊淳)が「マリオネット」と答えます。
そう、君たちのことだよ、とつぶやく帝一。

このラストのシーンですべてひっくり返す、「美しき青春物語」
帝一の「野心」は変わらなかった、という意味を持たせて終わらせたその手法が見事だと思いました。
やっぱり主役は「帝一」で「大鷹弾」は帝一の影でしかなかったことがわかります。
この映画のテーマ「野心がとまらない」が見事に着地した瞬間です。
キャスティングも見事です。

個人的には『和太鼓』のシーンが大好きです。
傑作です。