「サードドア」~夢を後押しする国~


NHKの朝のニュースで見て「サードドア 精神的資産のふやし方」を読みました。
amazonのコメントでは結構な辛口を述べている人もいるのですが、なかなか面白かったと思います。

親の期待に応えて医者になるのがどうも気が進まない10代の青年が、「成功した人にその秘訣を聞こう!そのコツを若者に伝えよう!」という発想からの資金の獲得のためにクイズ番組に参加して、優勝。高級ヨットをゲットしてそれを売り、資金を得る。
そこからの多くの失敗と少しずつの成功の物語。

この本が画期的なのは、「成功した物語」ではなく、その途上にいる若者の「成功の途中譚」だということなのだと思います。
本でも詳細が明かされていますが、目標だった「ウォーレン・バフェット」(有名投資家)と「マーク・ザッカーバーグ」(Facebookの創設者でceo)のインタビューには失敗しています。

サードドアは、この本を読む限り、「明確な目標を持つ者が失敗を繰り返しながら開けるコツをつかんだドア」であるような気がしました。

そして、特筆すべきは、たんなる「成功者」だけではなく、自分の選択で人生を豊かに過ごしている人も出てきます。
印象的だったのは、あのスティーブ・ジョブズとアップル社を立ち上げたスティーブ・ウォズニアックのストーリーです。

アップル社を立ち上げる前、ソフトウェア開発の報酬に700ドルの半分と言ってジョブズから渡された350ドルは、実は何千ドルの報酬だったこと。
いわゆるジョブズがピンハネをしていて、ウォズニアックがそれを知った後で問い詰めてもジョブズはしらばっくれたとか。

アップル社の株を公開するときに、一般社員にその株を買う資格はなく、ジョブズの反対を押し切ってウォズニアックが自分の持ち株から買わせたのだとか。
ジョブズ亡き今、ウォズニアックの発言に反論はできないけど、たぶん本当なんだろうなあ。

ウォズニアックになかった「欲」をジョブズは持つ続け、あのアップル社を(紆余曲折はあったけど)あそこまでに作り上げた。
そのドアをたたき続けて成功した人ではあるけれど、どこか「危うさ」があった気がします。

「ウォーレン・バフェット」の下で7年働いていたというダンの件もなかなか深い。
バフェットから教えられたという「やらないことリスト」の話は「なるほど」とうなずくこと満載で、「やることを絞っていく重要さ」なんてものすごく納得なのだけど、
実は、ダンはバフェットの下では働いてはいなかった、というオチ。

なかなか深い話でした。

そして、アメリカはやっぱり「アメリカンドリーム」を信じる国なのだ実感しました。
明確で面白い発想、それを実行する力のある人を応援する、そんな土壌があるのです。

本人が書いた本ではないけど、「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」と「シュードッグ」(ナイキの創設者フェル・ナイトの話)と共通するのは、どんどん人と繋がってプロジェクトが立ち上がり、実行されてゆくプロセスがあり、淘汰もされるけれど、ネットワークのすごさを垣間見ることができました。

「アメリカンドリーム」は一人で立ち上げ一人で成功したストーリーではなく、色々な人の力添えがあってその成功に導いた全過程の物語なのだと思いました。
自分を語ることで、次に続く人の手助けになれば、という考えがあることを知った気がします。

「ノーブレスオブリージュ」とは違う「フロンティアスピリッツ」が持つ「開拓の恩恵は皆に」というようなものではないか、と思いました。