「樅木は残った」が頭に残っていて、なかなか次の本に行くことができません。
原田甲斐のお家(いえ)を救うためにありとあらゆる「一見した正義」に背を向ける強さ。
原田甲斐の本当の「正義」は、表には決して現れない「正義」だった。
それは、孤独でしかも「罪人」としてのそしりを未来永劫受け入れることを強いるもの、一家惨殺をも覚悟した正義でした。
恨まれること、憎まれることも、受け入れる。
正義というよりは「義」だったのだと思います。
何より「反逆」の罪は一家断絶を意味し、一族男子は全員「切腹」、幼児(男子)には「斬首」
まだ戦国の時代の名残りがあった1660年代、キツイ。
そして、共通点を無理やりさがしてみた。
ヒロイン、モーションの「正義」。(もちろん原田甲斐との比較はできないけど)
父に無理やりアメリカに行かされ(最初は旅行というてい)、父は自殺、遺産がモーションに渡るのだけど、その遺産を父の死の代償として受け取ることをよしとせず、事業を起こすために広告を出して寄附を募っていたインに(大方は他団体に)と父の遺産を手放します。
インは事業に成功、DVで夫を刺した中国人友人の服役中にインと偽装結婚をし、その子を養子としてモーションの元に置く。
いずれもモーションの「正義」から出た行動でした。
イーチェンは、モーションの猛アタックによって付き合い始めたのだけど、「弁護士」を目指す彼の本能がモーションの「真っ直ぐな正義感」に惹かれたのだと思いました。
常にモーションは正直で純粋だった。
イーチェンは父母が少年時に亡くなり(自殺?)、引き取られた家に感謝しつつも、甘えられない、そして父母がいなくても立派になる、というプライドとで、どこか頑ななところがありました。
そういえば、原田甲斐は、5歳で父を亡くし、その時点で当主になった。
イーチェンの自立心と己を磨く克己心という共通項もあるかもしれない。(無理やり)
そう、「樅木~」で冒頭から登場し、最後にも原田甲斐の幻を見る、宇乃の存在が心に残りました。
原田甲斐とは恋仲になることはなかったのですが、宇乃は甲斐を慕い、甲斐も心に秘めた思いを持ちます。(多分)
孤独な甲斐の唯一の人、だったのかもしれません。
原田甲斐は、前妻&現在妻、御側仕えの女性、との関係はあったのですが、「ソウルメイト」な感じではなかった。
宇乃との言葉を交わさないでも通じあえる、魂の声を聞くことができるという関係があったのだと思うのです。
イーチェンにとって、モーションは唯一の「サンシャイン」だったのと同じかも、と無理やりこじつけました。