樹木希林と市原悦子 ~たけしの発言から~


樹木希林の「一切なりゆき」がベストセラーになっています。
ちょっと前だけど、たけしが樹木希林のことを語った言葉が話題になっていました。
樹木希林との共演を聞かれて、

「ありますよ、ボクサーで言うならベテランのファイターだね。相手が新人だったら徹底的にやられちゃうね。左手一本でやられちゃうくらい芝居がうまい。
あと、相手のいいパンチを絶対に出させないテクニックがあるから、希林さんとやると嫌がる人が多いよね。いいとこ出せないから、ガッと押さえつけるから」
役者としては、自分が出たら自分の世界に入り込ませないぐらいの世界チャンピオンクラスの芝居をやるから、若手はみんな参っただろうね。うまいもんですよ。
『あれ? こんなはずじゃ…』って思ってるうちにカットになって、自分のシーンがなくなっちゃうっていう。それくらいうまい」

「(樹木希林が)上手すぎて、樹木希林が登場すると、途端に他の人が演技しているって感じちゃう」とも。

別の記事には、樹木希林さんは、たけしの演技については何も言わなかったと書かれていました。
ただ和田アキ子とたけしに物申す唯一の人、との紹介から、下記の発言をしたらしいです。
(和田アキ子には「そんなに飲んじゃダメでしょ」と説教ができた唯一の人とか)

「希林さんは、たけしさんも同席していたあるパーティで『あの映画(亀とアキレス)の何が面白いか、私にはさっぱりわからない。あなたもそう思わない?』と周りの人に聞いて回っていました(笑)。たけしさんがいる会場でですよ! すごい人だな、と思いましたね」

たけしの樹木希林の演技に対するコメントが流石だけど、樹木希林の発言もロックです!
1990年代に「金(キム)の戦争」というドラマ?映画?で共演しているらしいのですが、「レベルが違い過ぎて共演したくない」と思ったとか。
多少の「うらみ」もあるのかもしれません。
たけしはその後亡くなった市原悦子と樹木希林の違いについても語っていて、

だけど、2人は女優のタイプとしては対照的だったと思うぜ。
2人とも演技中の「間」の取り方が上手いんだけど、その間の使い方がゼンゼン違う。希林さんは共演者が熱演していたら、わざとそこに台詞をかぶせるようにして間を詰めたり、逆になかなか台詞を言わないことで間を外すこともあった。そういうやり方で、相手に実力の差を見せつけるというかさ。
共演者からするといいところを全部持っていかれちまうから、「怖い役者」だったと思うんだよな。
市原さんはその逆で、相手の間に合わせるというか、「受け」を重視する役者という気がするね。相手の出方をよく見て、相手役の俳優の演技を引き立ててくれるというかさ。絶妙の間で台詞を入れてくれるから、相手も乗ってこれる。2人とも違った魅力だけど、市原さんと演る方がオイラは楽かもな。

樹木希林アゲアゲの中、正直な発言だと思いました。
そして、「樹木希林」の芝居に対する姿勢は「闘い」だったのでは、と感じます。

一視聴者としては、市原悦子の声優としての芝居はとても好きだったけど、「家政婦」のようなちょっと「ベタ」とした感じが好きではなかった。
樹木希林の俯瞰していてちょっとヒヤッとするシニカルな芝居が好きだったな、と。
彼女の矜持、「ほら誰もついてこれないでしょう?」という思いがどこかにあったのかも知れません。
誰に何を言われても平気、嫌われることを恐れない、「これが私」という貫き通す意志、でしょうか。

そしてちょっと感じたのは、たけしの「ちょっと上に上がってしまった」感じ。
映画監督をやって、社長をやって、一番上にいるのが心地よくなった人の、それを崩す人がちょっと「苦手」という感情が見え隠れしてしまうのは、考えすぎ?

下記のエピソードが希林さんの「働くこと」がどういうことかのエピソードとして表れている気がします。
全て一人でやっていた人だからこその「気づき」ですし、一つ一つが「キチン」とした人だったのだと思います。
「孤高の人」ですね。
https://note.mu/hatarake365/n/na1ea059134ef