ネットフリックスとユーネクスト、amazonプライムをふらふら行ったり来たりをしていると、なかなか本が読めない。
2ヶ月くらいかけて読んだ柚木麻子の「らんたん」
恵泉女子大の創設者、河井道の生涯を小説にしたものなのだけど、登場人物が多すぎてエピソードの盛沢山に疲れ、休み休み読んでいたら時間がかかってしまった。
思い出しただけで、津田梅子と大山捨松、村岡花子に柳原白蓮、平塚らいちょう、山川菊栄、新渡戸稲造に有島武郎、徳富蘆花 etc・・・・
戦後、GHQで日本に来日するフェラーズまで。
もう少し、登場人物の数を減らし、河井道と生涯のシスターフッドを持ち続けた渡辺ゆり(のち一色ゆり)に焦点を当てて欲しかった。
そして長い物語で、河井道と渡辺ゆりのエピソードがまぜこぜになる。
二人ともアメリカに留学するので、余計。
一番の違和感は、ゆりがアメリカの大学で出会った野口英世が蛇にかまれ、ゆりが手当をし、そのことがヒントになって野口英世が「血清」にひらめいた、という場面。
フィクションとわかっていても、とってつけて浮いた感じがしました。
何が一番印象に残ったかと言えば、恵泉女子大にワニがいて、「イナゾウ」と名付け寮生が散歩する、という話。
とここは気に入っていたところなのだけど、なんとそれはフィクションだった、ということでした。(剥製はほんとにあったらしい)確かにワニの散歩は現実に無理がある・・・・
Amazonの「らんたん」のコメントで「朝ドラ」に、と言っている人がいたけれど、なるほど、と思いました。
そして何より、恵泉女子大が2024年度以降募集を停止する、というニュースがこの本を読んで思い返されました。
確かに昭和世代の私たちにも、案外「恵泉女学園」の馴染みが薄かった。
「津田塾」「日本女子」「東京女子」「昭和女子」等々、女子高校生の進学率が高まる中でも後塵を拝してしまった気がします。
河井道が津田梅子に比べると広く知られていないのも残念だった。
この「らんたん」を読む限り、津田梅子先生に習うより、河井道先生の方が絶対楽しくて、のびやかな学生生活を送れそう。
教師としても、人としても度量のある、柔軟な人だったのだと思うのです。
「女子英学塾」を辞めて新しい学校を創ろうとした、その河井道は、柚木麻子さんもインタビューで言っているのですが、エリートを育てるだけじゃなくて、「学んできたものをシェアしよう」というところから出発しているのです。
この人の魅力ある創設時のモットーを受け継ぎ、発展させて欲しかった。
共学にすればよかったのか、多摩市ではなく、都市に移転すればよかったのか。
それにしても少子化故の大学競争激化は今後ますます激しくなってゆくことでしょう。
生き残りをかけた戦いがもう始まっているのだと思います。
早々に閉じることをきめた「恵泉女子学園」はむしろ泥船に乗る前の決断だったのかもしれません。