「刑務所のルールブック」の面白さは「どん底からの復活」を描いたことだと思うのです。
妹が暴行され、犯人を過剰に殴打し死亡させてしまい(やらなかったら殺されていた可能性もあった)実刑判決を受けた野球のスター選手、パク・へス演じた「キム・ジェヒョク」に何故かハマった。
パク・ヘス、ものすごくよかった。
いわゆる美形!という俳優ではないし、若手でもない(今年40歳)。(舞台俳優だったことで認知度が低かった)
キム・ジェヒョク、野球しか出来ないという社会性がない人物として登場する。
マウンドでは輝くのに(といっても最後まで選手としては登場しない)ぬぼーッとした雰囲気を漂わせ、裁判所に行く道すがら(大好きな)アイスを食べてる姿がマヌケ。(また弁護士役のユ・ジョンミンとの掛け合いが最高!)
そして、拘置所から刑務所へ(実刑判決を受けた)。
親友の刑務官ジュノ(チョン・ギョンホ)のサポートを受けながら、刑務所生活を過ごしてゆく、そしてジェヒョクの隠されていた能力が発揮されてゆくのです。
そのプロセスが最高!
まず、ジェヒョクの人を惹きつける力。ヌーボーとした外見からは、想像つかないくらいの人たらしを見せつける。
ジェヒョクは、人に対して「偏見」を持たない。無防備さを醸し出しながらも、案外人をちゃんと見ている。その見方は決して外れていない。
刑務所長には小出しに「要求」をのませ、自分の「サービス」を提供する。
弱い者に優しく、不正や悪事には自ら立ち向かう。
人の好意を素直に受け(恩師が夢に出るというアホな作戦にひっかかる)、野球を再開、地道な努力を続ける。
彼の努力を続ける姿に閉ざされた空間が明るくなり、最悪の環境がかすかな「希望」をもたらすのです。
刑務官のジュノは、ジェヒョクを助けながら、ジェヒョクから知らずしらずのうちに「力」をもらう。
何事にもクールで、スマートに割り切ったジュノが「こだわり」を持つようになり「視点」の変化をおこす。
チョン・ウンイン演じる刑務官(いつもは悪役が多い人。とてもいい役でした)、ジュノとは正反対のキャラクターで、泥臭い仕事をする人にも共感を覚えるようになる。
刑務所内の受刑者たちがまた魅力的で、ジェヒョク同室となる受刑者たちのやり取りは、人が替わりながら飽きさせない。
敵対していた受刑者までもが慕う人、ジェヒョク。
何かを与えるのではなく、彼が真摯に向き合う「野球」という目標に寄り添うことで、変わる日常があるのです。
ドラマは、現実も映し出します。
麻薬取締で受刑者になったハニャン(イ・ギュヒョン)は、出所後すぐに捕まってしまう。
受刑者に金をせびり、私腹を肥やす刑務官も存在する。
刑務所内で徒党を組む悪軍団もいる。
リアルとフィクションのさじ加減、これもまた「応答せよ」のスタッフ陣の巧みな技で傑作なドラマになっていると思います。