「D.P. -脱走兵追跡官-」



ネットフリックス話題の「D.P. -脱走兵追跡官-」全6話。このドラマを面白いと素直に言ってしまうのにはためらいがあるけれど、「衝撃的ドラマ」であることは確かです。チョン・へインの当たり役となったのではないか、とも思います。

「瓔珞」からの軍隊もの、「瓔珞」の70話から比べると、あっさり終わってしまった感はあるのだけれど、韓国の現実を突きつけるストーリーはかなりのインパクトがありました。

実は、チョン・へイン君のドラマは、ちゃんと見たことがなくて、彼の人気も今一つわからなかったのです。
このドラマ観て、彼の魅力に気が付いてしまった!!
短髪が似合うってこともこの役へのオファーが来たひとつとも思うし、何よりバツグンのスタイル。
決して高身長ではないけれど(180cm越えがあまたいる韓国俳優からすれば、彼は178cm)顔の小ささと、手足の長さ、肩幅といい、締まった上半身といい、黄金比であることは間違いありません。
動いている彼はまるで、カモシカのような素早さと身軽さ、ボクシングをしていたという役のために、4ヶ月のトレーニングを励んだとか。
今までのイメージ、爽やかで優しい笑顔と物腰の柔らかさを封印して、寡黙で不愛想で、決して世の中の希望を見出そうとしないかたくなさを見事に表現しています。

そして、そしてこのドラマの役者陣。誰一人としてリアルでない人がいない。ものすごいレベルの高い演技をしています。
一番びっくりしたのは、チョン・へインのバディ役を務めたク・ギョハン。
全くもってしらない俳優だったのですが、ものすごい役者です。
見ようによっては、チョン・へインを完膚なきまでに食った、とも言えるし、ギョハン自身も存在感を見せつけ、ギョハンによってまたへインも輝いた、ともいえるような気がするのです。

この矛盾する見方は、ク・ギョハンの存在がそれほど多角的で、不思議で、面白く、魅力的なのです。
二人で組んで「脱走兵」を捕まえる憲兵としての命を受けるのですが、硬くて真面目なへインと飄々として口の上手いギョハンは互いの欠点をカバーしつつ任務を遂行してゆくのです。
「脱走兵」は一人一人に理由があり、二人は追跡しつつも、その背後の個人的事由にも目を向けます。
それは、また自分自身とも向き合うことにもなりました。

ギョハンは一見不真面目なのですが、根底に流れる心根は暖かく、無鉄砲な中にも繊細さがあり、へインの一見頑なで頑固なところ、でも一瞬のひらめきと応用力が二人に化学反応をおこします。

たたき上げのキム・ソンギュン(応答せよ1994と応答せよ1988に出演)とエリートのソン・ソック(サバイバーでの秘書室長で出演)の関係も面白い。
この二人の存在感も見逃せません。

こんな過酷な軍隊生活を送っていたら、誰でもおかしくなるし、その後の人生に暗い影を落とすのは明らかです。
韓国社会のジェンダー問題も、兵役の影響は少なからずある、というのはよく言われています。
勝ち組と負け組の格差、誰かを晒し誹謗中傷をぶつける、そんな過激さは「兵役」の影響を受けているのではないか、とも思ってしまう。

2年の兵役がもたらすこの国の「負」に正面から向き合ったこの作品にエールを送りたい。