どこも出かけなくなって、週末に本を読むことが多くなった気がします。
「赤毛のアン」「アンの青春」「アンの愛情」「風柳荘(ウィンディウィローズ)のアン」(これは「アンの幸福」という題だった)「アンをめぐる人々」を読み(すべて再読ですが)、アンが全く出てこない「もつれた蜘蛛の巣」を読み終わりました。
この「もつれた蜘蛛の巣」が最高に面白い!
一族のドンで、一族から恐れられていたベッキーおばが死の床で、遺産相続を告げる。最後に伝統ある一族の「水差し」を誰にあげるかは謎のまま。
みんなはその水差しが欲しくてたまらないのだけれど、すべては1年後と言い残します。
(その水差しは、管理人に預け、1年後に管理人から発表する、と。管理人に文書を渡して、そこには名前が書いてあるかもしれないし、くじ引きするようにと書いてあるかもしれないし、管理人が皆の今後の行いを見て決めていいと書くかも、と一族を混乱させた)
管理人に一存するとした場合に備え、皆はその「水差し」の持ち主になるべく、立派な人物になるために、努力し始めます。
あるものは、口汚いののしり言葉を言わないと誓い、あるものはやり始めたものを完成すべくとりかかり始め、あるものは「結婚」しようとし、あるものは好きなことを我慢したりと、目に見えること、見えないこと、「刺激」が訪れるのです。
登場人物の多さ、複雑にからみあうストーリー、なかなか読み進められない冒頭を乗り越えると、たまらなく面白い!!
10代で恋愛に夢中のゲイ、なぜか結婚式のあと同居せずに別々にくらしているジョスリンとヒュー、そのベッキーおばの最後の会見の場で、一目ぼれをした未亡人のドナ、家を出て自分の「夢の家」に住みたいマーガレット、ちょっとしたことから喧嘩別れをするリトルサムとビックサム。
登場人物の人間関係の複雑さもこの物語の面白さです。
別れる→再び結ばれる、別れる→違う人と結ばれる、違う人に恋する→もう一度最初に戻る。
でも、誰も不幸にならないエンディングに、爽快感と(読み終わった)達成感とほっとする幸せな感覚をもたらすのです。
そして、ときどき登場する「月の男」、少しおかしい(頭が)彼の予言めいた言葉が物語のスパイスになるのです。
ロマンティックな話もあり、こっけいな話もあり、ぐっと胸が熱くなる話もあり、ともかくいろいろなエピソードが絡み合います。
モンゴメリの真骨頂は、人物描写の巧みさ、特に「悪口的辛辣」な人間描写だと思います。
それは、今回の一連のモンゴメリー作品の再読で発見しました。
この「蜘蛛の巣」で言えば、ドナと同じ戦争未亡人のヴァージニアへの描写は、辛辣です。
時代でもあるのですが、ヴァージニアは結婚生活がほとんどなかった亡き夫への思慕を自分で脚色し、その「美しい思い出」の中で生きています。
ドナも同じ未亡人としてヴァージニアとの友情をずっと育んできたのですが、ドナがピーターと恋に落ち、彼女の友情がだんだんと「煩わしく」なってゆくのです。
その二人の変化がとてもうまく描写されています。
鋭くえぐるように、かつ滑稽にユーモアを持って描かれる人間模様が巧みで、モンゴメリのすごさは、「登場人物のキャラクターの多色さ」と改めて発見しました。
そして、ラストに驚くべきハプニングを用意してあります。
類まれなる圧巻のラストです。
ここでは書けません。
ご一読を。