「女王陛下のお気に入り」、示唆に富んだ、それでいて、かなりブラックな作品だと思います。
アン王女と側近サラとの関係に先の韓国大統領パク・クネとチェ・スンシルを思い浮かべました。
共通点はアン女王に降りかかった不幸と、頼る身内が誰もいなかったこと、若い頃からの知り合いだったこと、等々。
アン女王の気弱で物事を決められない性格に、キッツいサラがてきぱきと物事を決めて行く図、これもパク元大統領とチェ・スンシルの関係と同じかも、と思いました。
側近のサラは幼なじみで、多くの子どもを亡くし夫にも先立たれたアン女王にとって、身の回りの世話に加え、政治的意見を仰ぎ、加えてメンタル面でも支えていて、サラなしでは日々の暮らしもままならない状態になっていました。
そんなところに、サラのいとこで没落貴族の娘、アビゲイルが登場します。
強い野心を持ち、抜かりのない彼女は、あっという間に女王に気に入られ、女王を相手にサラとアビゲイルの二人が取り合うという、三角関係のような状態になるのです。
二人が自分を取り合う様子が楽しいアン女王、二人の嫉妬をあおり、自分がはじめて優位に立つ快感を味わうのです。
しかし、二人は互いに蹴落とすことしか考えられなくなります。
そしてついに、アビゲルがサラを蹴落とし、勝利を手にします。
アビゲイルの陰謀によって醜い傷を顔におったサラは、公金横領の罪まで着せられ、宮廷から追い出されます。
ところが、サラがいなくなったアビゲイルは、少しずつ態度が変わってゆくのです。
それを敏感に感じ取る女王。
サラでも、アビゲイルでも結局心満たされることはなく、やはり孤独だったアン女王。
女王の威厳をアビゲイルに示すラストシーンは解釈を視聴者に委ねたように思いました。
視聴して思うのは、二人は手を取り合うことができなかったのか?
側近の一人に牛耳られた女王という図が最初から最後まで変わらなかった。
時代の限界なのだろうけど、役割を分けるとか、交代制とか、順番で定年を待っているとか・・・・
いつの時代も、自分に寄り添い、且つ頼りになる人、自分の苦手な部分を担ってくれる人に権力者は弱い。
その人も次のポジションを狙ってその役割を全うしようとする。
元韓国大統領のパク・クネさんの不幸、母が父を狙った凶弾に倒れ、その後父が暗殺され、途方に暮れたときに差し出された手、それがチェ・スンシルの父で、その後は娘に変わり、親子で利権をむさぼった。
反対する人を巧みに彼女の側から追い出し、妹弟まで遠ざけたといいます。
いや、やはり恐ろしい。
権力を手に入れようとして「トップ」に近づく人のなんと「巧妙で才知のあることか」
なんの「権力も地位も、もちろんお金も」持っていないことにほっとします。(なんて)
この映画の魅力を語らねば。
コスチューム、背景(セット)、演技、どれをとっても素晴らしい。
17世紀にどっぷり浸かれます。