「天才の育て方」 ~イスラエルとアインシュタイン~


今日2018年6月3日の「朝日新聞グローブ」のテーマは『「天才」の育て方』教育はとても大切なのだということです。(当たり前でざっくりとした感想)
記事の一番最初、コペンハーゲンの「ニールス・ボーア研究所」の研究員に抜擢された若き天才「姫岡優介さん」の受けてきた教育とお母様の心砕いた育て方に感銘しました。

「なぜ?」の疑問には家事の手を止めて答えてあげたこと。
それゆえ理屈っぽく大人びた小学生は、周囲になじめず浮いてしまったこと。
お母様も心を痛めたけれど、教育方針は変えることなく、教科書を使わず、討論形式の授業をする中高一貫で全寮制の学校に入学。
おとなしかった子どもがリーダーになるくらい積極的な学生になったそうです。

それにしても驚くのが、そのお母さん。息子さんのその学校「暁星国際学園・ヨハネ研究の森コース(研究の森)」に入学した後、離婚して開いた学習塾が評判になり、その後大学の特任講師を経て、私立高等学校の校長に就任したとか。

すごい!!(母も優秀だった、ということなのです)
天才は「自生」するのではなく、「育成」されるのだと思いました。
そんな人材を育むのは異文化、つまり異なった考えを持つ者と議論して自らの考えを鍛えてゆくこと、と『MITメディアラボ』(米マサチューセッツ工科大学の中にある研究室)で客員教授を務めた現慶応大学の教授が言っています。

正解のある問題を人より速く解くことだけにたけた人間は、正解のない問いを前に無力になる

全く別の新聞記事で、東大を出た人が留学して何が大変だったか、というと「あなたはどう考えるか?」という追求だった、と言っていたのを思い出しました。
東大へ合格するには「自分の知識を総動員して目の前の問題にあたり、いかに素早く『正解』にたどり着くか」ということに長けることだった、と気づいたそうです。(もちろんそれも必要だったりはするのでしょうけど)
常に「正解」を考えてしまう、そのことに気づかされたと言ったコメントも記憶にあります。

また、別の記事で「イスラエル」が国をあげて、天才を発掘し、軍事技術に貢献させ、退役すると国力を高めるためにその技術・才能を発揮させる、ということが書かれていて、他の記事との違いを浮き立たせていました。
「軍」の過酷な環境の中で鍛えられ、自分の強みを発見し、目標に向かう力をつける、ということなのです。
どんな困難な課題でも、限られたコストと時間で成果を出すように求められた経験が実践に役立つのだそうです。

そのイスラエルという国の特殊性を思いながらふと、下を見ると、あのアインシュタイン先生の写真が。
アインシュタインが嫌ったのは、「軍隊」と「ドイツの学校」
幼少時、軍事パレードを見て「僕はあんなあわれな人間にはなりたくない」と泣き、ドイツのギムナジウム(中学・高校)の授業も「意味のない命令を繰り返し、訓練する軍の方式と同じ」と反発、のちドイツ市民権も放棄した、という記事。

イスラエルの国が持つ特殊性の中で「天才」を育てるより、アインシュタインが規律や権威を嫌いドイツを去った後、スイスの工科大学で自発性に基づく自由な学習・研究で才能を発揮した、そのことに魅力を感じます。
イスラエルの国の政策とアインシュタインの自由を愛した研究人生の相反する紙面の作り方に「朝日新聞」のシニカルさを感じたのは私だけではないはずです。(アインシュタインの平和主義に対する見解も諸説あるようですが)