アカデミー作品賞(監督賞と脚本賞も)を取った話題の「パラサイト」を観ました。
面白い!エンターテイメント、だと思います。
いわゆる「格差社会」を描いているのだけど、その格差をユーモラスに、そして、スリリングに最後には「猟奇的」に。
そして最後の最後にはかすかな「希望」があったと思いました。
映像の持つ、視覚で訴える、という技を示してくれたポン・ジュノ監督のすごさを観た気がします。
印象的だったのは、半地下家族が金持ち一家のキャンプに出かけた留守をいいことに、占拠。
雨で切り上げてきた持ち主が帰ってきてしまい、ほうほうの態で家から脱出、半地下の家がいかに低いところにあるかを豪雨が示すシーン。
キャンプの続きを家の庭でしている息子。ソファで息子の様子を見ながら夫婦でエッチをしている。
そこをやっとの思いで抜けだし、半地下の家に戻ると、下水の水が溢れ、トイレからも汚水が逆流し、家は悲惨な状態になっている、金持ちの家では息子が雨の中キャンプをしているのに。
その金持ち家族が帰ってくる前に元の家政婦が地下に隠していた夫が登場し、「波乱」が巻き起こります。
そのサプライズがまたこの映画のエンターテイメント性を押し上げていました。
半地下家族と地下夫婦。
そこで、なんで手を組まないかな?と思ったのですが、それもまたポン・ジュノ監督の目論見なのでしょう。
半地下と地下と金持ちとの3つの層があることを表しているのかも知れません。
三つどもえの闘いがラストの「殺人」です。
半地下の兄が地下の家政婦の夫を殺すつもりが、失敗。
地下の夫が半地下の娘を殺し、その夫を半地下の母が殺す。
そして、地下夫のニオイに鼻をつまんだ金持ちの夫を半地下の父(ソン・ガンホ)が殺す。
全ての層の対立がそこにはありました。
半地下の母と兄は釈放。
半地下の父はまた金持ちの家の地下へ隠れる。
そして、父の居場所を突き止めた兄は(モールス信号を解読して隠れ家がわかる。この時代にモールス信号とはシニカルだと思いました)、自分が金持ちになることを夢見て終わる。
絶望の中での「希望」が、またポン・ジュノ監督の秀逸な手腕です。
ソン・ガンホの息子役のチェ・ウシク、妹でガンホの娘役のパク・ソダム、その母を演じたチャン・ヘジン3人とも絶対に整形していないナチュラルなお顔で、ものすごくリアリティがありました。
地下の家政婦イ・ジョンウンも、狂気的な夫パク・ミョンホンもすごかった。
映像での可能性をまたひとつ示してくれた作品ではないか、と思うのです。
韓国映画の強みと勢いを感じたし、ただキレイではない実力者の俳優人のすごさ。
アカデミー賞にとっても、「世界に広がった」という志を示すことができたし、世界がまたアカデミー賞を評価することは悪くないはずです。
画期的な年になった気がします。