「おっさんずラブ」は「すいか」に似ている


遅ればせながら「おっさんずラブ」を観ました。
格差愛、不倫愛、年の差愛等々いろんな恋愛をドラマ化したけれど、男子の三角関係(四角?)のドラマの発想はなかった。

もはや、男子ラブが一番ピュアで、何の思惑もない「ラブ」なのかもしれないと思いました。
それにしても、このドラマの秀逸さといったらなかった。

このドラマの何よりの特徴が「固定観念徹底的無視」の一貫性。
全ての人の想い、行動、出来事を「自然に受け止める」
しかも、そんなことをラクラクと当たり前にやっている。
その結果「おっさんずラブ」のなんとすがすがしい(タイトルとは真逆で)こと。

誰一人として「偏見」にとらわれることなく、「ヘイト」の感情を持つことがなく日常生活をおくることができる、という一種「パラダイス」を描いているのです。
この既視感は何だろう?としばらく考えてみたのですが、はたっと、2003年のドラマ「すいか」に似ていると思いました。
あのドラマもすべてを「否定しないで受け入れてみる」、というスタンスを貫いた、しかも「潔さ」を感じる芯のあるドラマでした。

すいかは「恋愛」を一切排除した女性ばかりで暮らす賄いつきアパート、”ハピネス三茶”で繰り広げられる日常を描いたドラマだったのですが、その”ハピネス三茶”が今回のドラマでは、不動産会社”天空不動産”だったのです。
前提は自立・自己決定でありながら温かい「ハピネス三茶」
あそこで暮らしたい!と思ったのですが、今回は「天空不動産」で働きたい、と思いました。

「天空不動産」の(企業としての)「目標達成」の熱さを感じつつの、「ゆるさ」と「前向きさ」そして「柔軟さ」
そこで働く人が最大限自分の能力を発揮できる、できそうな気がするのが”天空不動産”の魅力です。
そんな”天空不動産”の描かれ方にこれからの企業の在り方さえ示唆した感じさえするのです。(ちょっと大げさ?)
ちなみに、私はマイマイを演じていた伊藤修子さんが好き。(「好きになっちゃいけない人なんていないと思うよ」このセリフ、素敵でした)

田中圭のブレイクをもたらせた「おっさんずラブ」
私の中での田中圭と言えば、2008年の「魔王」(嵐の大野智主演のドラマ)での吉瀬美智子と不倫関係にあった一見真面目な青年役、そしてNHKの大河ドラマ「軍事官兵衛」での石田三成の暗くて頭の切れる策士役、その後は「民衆の敵~世の中、おかしくないですか」の篠原涼子の夫で妻の仕事を支える専業主夫役。
そのときの明るくて、ノー天気な夫に「こんな柔らかい役もできるんだ」と田中圭の役者としての深さを再認識しました。

若いころに「イケメン俳優」として主演をはらなかった分、いろんな役ができる。(つまり飽きられていない)
その平凡さを生かしての「リアル」な感じを出せる。(つまり使い勝手がいい)
今までの「脇役人生」が花開いたのです。

田中圭の一見フツーの男子がここまで魅力的に見えるのは田中圭の役者力でしょう。
そして、そしてやっぱり吉田鋼太郎の演技力の高さ。
ふり幅の広い「できる上司!部長」から「乙女心の武蔵」までまあその引き出しの多さには驚かされます。

林遣都くんのイケメンぶりも、眞島秀和の武川役も、まあ見事にハマって、キャストのムダが一切ないのも「すいか」に似ている。
幼馴染役のドラマの華(?)内田理央演じた「ちず」も男同士の恋愛にからむ唯一の女子役にもかかわらず、自己中心的でなく、共感性の高さを貫いた姿勢が良かった。

でも最近田中圭と内田理央の「密会」が週刊誌ネタにされていて、それはやっちゃいかんでしょうと思いました。
この「おっさんずラブ」の余韻をぶち壊すことをしちゃダメです。

田中圭の(案外)やんちゃぶりは有名らしいけど、せっかくの好機、「フツーの男のブレイク」つまずいたらもったいない、と思います。
頑張れ!!