樹木希林 ~大ブレイク中~


カンヌ映画祭で是枝裕和監督の『万引き家族』がパルムドール賞をとりました。
私が最近注目している『樹木希林』も出演し、今や飛ぶ鳥落とす勢いな感じです。
この方は、自身のがんが再発してからテレビドラマは断り、映画を中心に仕事をしているらしいのですが、オファーがひっきりなしにあり、今更ながら存在感を示しています。

この前の『徹子の部屋』で、「あなた、お忙しいわねえ」と徹子に言われ、「誰もやりたがらないから私にまわってくる」というようなことを言っていたのですが、そんなことはないはずです。

朝日新聞の朝刊にインタビュー記事(語る 人生の贈り物)が10回ほど載っていますが(今日が10回目)、その内容がすごく面白い。
いや~、非凡な人です。
そしてすごく頭の良い人だと思います。
当意即妙な演技は「知」のたまものなのです。

私の中のイメージはいわずとしれた『寺内貫太郎一家』の(先日なくなった西城秀樹の)バアちゃん役。なんとこの時、まだ30代、悠木千帆の時代です。
文学座に所属していた時、今は亡き杉村春子にも好きなコトを言っていたとか。
「欲」が全くなく、組織に組みすることもなく、どんな人にも嫌われることを恐れない、同調圧力にも屈しない人。
それ故、演じることにも自分を良く見せようとか、上手に演じようとはしない。
自分の与えられたものを「思考」し、「察し」、「掴む」ことにだけ集中する。
恐らく、演出家さえも想像のつかない「演技」をする人なのだと思います。

向田邦子の脚本を「つまらなかった」、と言い、死んでしまった演出家久世光彦を「亡くなったひとは素晴らしいことしか言われない」と含みを持たせる発言までしています。
その思ったことを口にする希林さん、徹子に「あなたには私のお葬式はまかせられないわ。何を言うかわからないから」と言わしめるくらいの人なのです。

知名度が上がったのはテレビドラマ「7人の孫」のお手伝いさん役。(さすがにこれは覚えていません)
主演の森繁久彌との掛け合いが面白くて話題になり、続編にはその森繁久彌自身が樹木希林(当時は悠木千帆)との共演を望んだとのこと。
テレビは拘束時間が長くてわりに合わない、と断ったところ、「(あなたの)ギャラを倍に」「でも森繁さんは1.5倍」ということで気をよくして引き受けたら、森繁さんのギャラはなんと樹木希林の何十倍だった(5千円のギャラに対し80万)、と笑って語っていました。

そして、何よりこの人の「掴んだ」ものは、娘婿の「モックン(本木雅弘)」です。
(おそらく樹木希林と内田裕也の間で特殊な育ち方をした)也哉子さんが今穏やかに生活出来ているのは彼、モックンのおかげでしょう。
そして、娘、也哉子さんが幸せで、3人の孫にも恵まれ(特に娘さんは可愛い)、役に恵まれ、別居夫の内田裕也も時々その和の中に入れてもらうことができ、(病気のことを除けば)今やその持っている度合いは、かなり高いところに行った感がある「樹木希林」

「がん」もどこかに行ってしまう、そんな気さえもしてきました。
おそらく、「いい人」のくくりではないはず。
「自我の強さ」と「独特の感性」、「冷徹なまなざし」がこの人を類い希な女優にしていると思いました。