「瓔珞」の富察皇后の死により、皇太后の勧めで新たに嫻妃(かんひ)が皇后に昇格します。
この嫻妃を演じた女優さんがなかなか良かった。
カーメイン・シェーさんという香港の女優さんだそうです。
爾晴のとち狂った「嫉妬の権化」としての悪女ではなく、じわ~っと「知略」を巡らせ、高みに登り、そして最後の最後にどちらに転ぶかを迷っているうちに、瓔珞にしてやられた「弱さ」を見せる。
ものすごくいろいろな面を表現した女性でもありました。
始めは気高く、公正で謙虚、それでいて教養もある女性のテイで、弟が病死、怒り狂った母が事故死、父が地方自治の失敗を理由に殺害されるという身内の不幸が続き、少しづつ人が変わってゆくのです。
可哀想な人でした。
弟が捕らえられた牢で病気になり、母親が嫻妃に助けをもとめます。
自分が持参した宝石類を売ってお金を得ようとするも、意地悪な高貴妃に見つかり、法に反すると阻まれる。
高貴妃の派閥に入れば見逃すという脅しにも否を通す意志の強さもありました。
結局、嫻妃付きの女官と商人に売りさばく仲立ちをした太監の部下がやった勝手な行動とし、二人の懲罰で事なきを得ます。(このとき罪を押し付けられた一人が袁春望)
この事件からずっと嫻妃の家族には不幸が付きまといます。
母親は、嫻妃が皇帝に懇願しないことを嘆き、寵愛されていないとなじり、私の不幸はお前のせい、というような激しい言葉を投げかけます。
身内のことですら冷静に対処しようとする嫻妃。
ところが、母親が嫻妃をなじりながら事故死をした後から変わって行くのです。
爾晴とは違い、「愛」を獲得するための嫉妬や独占欲ではなく、自分の母に認められたいという「承認欲求」からの変化。
もともとあった真面目さが悪い方に傾くと深い闇に入り込んでしまうのかもしれません。
忠実に着々と用意周到に自分自身に「力」をつけるために策を巡らします。
身体を張ることも厭わず、皇太后や皇帝を助け糸口を作り、人の欲を利用し人を動かし、目的を果たしてゆきます。
嫻妃が瓔珞の最大のライバルになったと言っても過言ではありません。
そして、嫻妃の足元がぐらついたのは、皇帝への「疑心暗鬼」。
自分が年老いて醜くなったかもしれないという不安、自分の力ではもう皇帝を味方にはできないという精神的不安定から自分の子を皇太子にさせるという野望が膨らむ。
和親王を味方につけていた嫻妃。彼をたきつけて、謀反を計画させる。(袁春望の策略にはまった)
最後の最後中途半端に終わったのは、おそらく皇帝への「愛」が邪魔をしたのだと思います。
嫻妃は自分が利用してきた「皇帝の愛」に最後は翻弄されたのです。
それが、瓔珞との大きな違いになってしまった。
常に認められたいと願う、その執着心故の落とし穴に自ら落ちたのです。
それが「紫禁城」という伏魔殿なのかもしれません。