「瓔珞〜紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃〜」



U-NEXT配信の「瓔珞〜紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃〜」ず~っと人に薦められていたのですが、8月にU-NEXTに加入、一気に視聴(全70話)してしまいました。
いや、面白い。面白かった。
なんというか、よくできた宮廷劇(決してロマンスではない)だった。

ヒロイン瓔珞(エイラク)の立身出世もの、と言えば簡単ではあるのですが、サスペンス的復讐劇あり、のし上がる者、蹴落とされる者、競争社会の壮絶な闘いがあり、皇帝の寵愛を巡る頭脳戦あり。つまり、「知能」がなければ生き残れない世界が「紫禁城」なのです。

瓔珞は、紫禁城で女官をしていた姉が殺され、その犯人を突き止め、かたきをとる為に自分自身も女官になる。
刺繍工房の女官、皇后の女官、そして懲罰的な場所と、いろいろさまよい、ついに皇帝の妃に上り詰める。

どうしてこんなに面白いのかと考えてみたのだけれど、人間の深~い闇を追求しているのだということに行きつきます。
その人の持つ地位・権力によって変わってくる人間関係とその人自身。
この人は「こんな人間」という憶測をひょいっとはずしてくる巧みな脚本、その人達の変化の様に目を見張り、落ちてゆく様にくぎ付けになります。
一貫して変わらなかった瓔珞は、権力を振りかざして罪なき人を苦しめた「悪人」を次々と征伐し、その痛快さに一種の中毒性を感じ痺れます。

皇后の弟傅恒(フコウ)の瓔珞への無償の愛もドラマの核になっていました。
彼の遺言、「来世」での約束を守るという瓔珞。
今世ではかなえられなかった愛を来世では叶えるという瓔珞。
かなえられない「愛」ほど美しいものはない、という証明だった気がします。
傅恒を演じたシュー・カイさんという俳優の辮髪姿がとても美しく、彼自身もこの作品で大ブレイクしたとか。
傅恒を観るたびに「眼福」という言葉を思い浮かべました。

乾隆帝を演じたニエ・ユエンさんもなかなかいい男で、清朝で最も隆盛時の皇帝を説得力を持って演じています。

でも、何といっても影の主役(と勝手に思う)だった袁春望。
自分は前皇帝の子、と言われ、乾隆帝に並々ならぬ敵意を抱き、奴婢となる。
味方と思えば敵、敵と思えば味方、最後は常軌を逸した狂人となる。
瓔珞を彼なりに愛してはいたのだけれど、それは「同じ境遇」である彼女でなければならなかった。
袁春望が憎んだ乾隆帝の妃となった瓔珞への可愛さ余って憎さ百倍となったのです。

瓔珞も元は奴婢。
ラストに袁春望は瓔珞の対比だったのだ、と気付くのです。
瓔珞は「正義の復讐」で、袁春望の「敵意」は不正だった、とオチを付け、恐ろしい敵意は自ら滅ぶ、という教訓も見せつけてくれました。