Netflixで配信されている韓国ドラマ「秘密の森1」「秘密の森2」が深い!
推理&サスペンスでもあり、「社会派ミステリー」というジャンルでしょうか。
いや~、みんな演技が上手い。
実にシリアス。
そして緻密に張り巡らされた点を最後に一本の線にまとめる「脚本力」に頭が下がります。
最初のシリーズは、財界との法曹界の癒着で、2は、警察と検察の「捜査権」を争う闘い。
1に比べると2が少し展開が遅くて地味に感じたのだけど、最後の最後に大きな展開があり、1とは違う面白さを感じました。
このドラマが投げかけた「テーマ」は重い。
組織の中で上からの命令に逆らえるか?という一見単純な話だけれど、ドラマを通して感じるのは「YES」というのがどれだけ楽か、ということを示してくれた、ということです。(いえ、全くよくないけど)
チョ・ソンウ演じる脳の手術によって感情を失った検事、ファン・シモク、パートナーになる刑事ハン・ヨジン(ペ・ドゥナ)がいい。
恋愛要素が全くないのも新鮮だったし、二人の(恋愛なしの)信頼関係がドラマのを一段上質なものにしている。
突きつけられるこの組織に自分がいたら・・・・?
一回真実を隠すと、次からは簡単になる。
証拠の捏造さえ簡単にできてしまう。
その隠蔽さえ上司が見逃し、組織ぐるみが出来上がり、個人の良心の呵責が消滅するのです。
この流れは、会社でも、政治でも、どこでも同じなのだと思いました。
チョ・ソンウ演じるファン・シモクの正義感は、一見すると単純に「善悪」を分けることができる人、という設定です。
彼だけなら、「感情がなければ悪にも染まらない」、という単純な図になるところですが、ペ・ドゥナ演じるハン・ヨジンという心温かいけど、正義感あふれる人物を投入して、一方的でない視点を視聴者に示すのです。
ファン・シモクの替わりにハン・ヨジンがうろたえ、逡巡し、悩みながら進んでゆく姿を私たちに突き付けます。
そして、ファン・シモクが徐々に獲得してゆくハン・ヨジンへの信頼と友情がラストに現れます。
それでも、口をつぐむ方がどれだけ楽で簡単か、ということなのです。
「真実」を追求した者が個人を追いやった事実として後ろ指をさされる。
「内部告発者」のたどる道を示しています。
信頼していた上司・同僚の「不正」を断罪する行為は何故「勇気ある行為」として認められないのか?
そこに、「組織」の持つ魔力が潜んでいるのだと思うのです。
人情とという足かせ、その人の人生を踏みにじるという行為の大きさ、つまり「何もしない」ことが一番楽なのです。
常に私の脳裏に浮かぶ太平洋戦争時の軍部という組織。
一般兵士が何万死のうが、組織を守るために、参謀や上層部は断罪されなかった。
事を穏便に済ませたい次長検事ががラストにシモク言い放つ「捜査権を売ってもいいのか」
シモクが応える言葉がまた深い。
「『捜査権』はもともと売りに出されていた」と。
つまり、今までの検察側の数々の行為が「捜査権」を持っているが故の不当行為だったじゃないか、と言っているのです。
全てを告白して退陣したヨジンの上司だったチェ・ビッの存在が、かすかな希望です。