「オク氏夫人伝」~完成度高いです~



「オク氏夫人伝 偽りの身分ー真実の人生」完遂。
主演のイム・ジヨンが実力派女優、と言われるだけあって上手い。
奴婢のクドクから両班のテヨンになるのですが、同一人物?と見紛うばかりの変身ぶりです。

例えば、ソン・ヘギョンのような非の打ちどころない美形女優ではないゆえの、「変身」ができる女優なのだと思います。

そして、若干25歳の相手役 チョ・ヨンウがまたスゴイ!!
この手練れ感を醸し出しての25歳、恐るべし、韓国の俳優陣の層の厚さをまたしても感じます。

韓国ドラマの最近の傾向として、ただ「守ってもらう」ヒロインはほとんどいない。この「オク氏夫人伝」のヒロイン奴婢のクドク(イム・ジヨン)もそう。

卑劣で残虐な主(あるじ)キム・ソヘにいたぶられ続け、計画していた逃亡を父と共に決行、父とははぐれてしまうが、オク・テヨン親子に救われ、その後本物のオク・テヨンが火災で亡くなり、オク・テヨンを名乗ることになるクドクの波乱万丈なストーリー。

勉学も出来、知識もあるクドクは、周囲の人の信頼を得て、人を巻き込み、味方にしてゆく。
外知部という「弁護士」になり、人を分け隔てなく接するテヨンに人は皆魅了され、貴賎を超えた人間関係を構築してゆくのです。

そして、なにより、このドラマを面白くしているのは、二役を演じたチョ・ヨンウ。
クドクを一目ぼれしたのちに芸人になるソインと役人ユンギョムを演じ、それぞれに違う形でクドクを支え、救う。

ヨンウ、若干25歳にして長けた演技力。
落ち着いた雰囲気とコミカルにも演じられる振り幅の広さ。

歳はずいぶんと若いけど、『D.P.』でホヨルを演じたク・ギョハンにも、(同じ『D.P.』にも出演している)ソン・ソックにも似た役者になる人だと思いました。

それにしてもよくできたストーリーでもありました。
この時代の女性に対する抑圧をものともせず、「外知部」として働く、何者?という目でみられていたテヨン(クドク)が地域に、女性たちに受け入れられてゆく、敵対していた人たちとも手を取り合う仲になる。

人々の暮らしを心豊かにしたいと物語を書き、舞台で演じるソイン、自分と同じ少数派の性自認に苦しむ人を助けようとするユンギョム。
時代劇でもありながら、多様性と人知の可能性を表現し、それでいて絵空事にならないシリアスさも入れ込み、性的役割を超えた、ある意味挑戦的でもある物語に仕立てている。

何より物語が、ドキドキ感、安堵感、スリルとワクワクの無限ループで休む間もない。
クドクを救うために全てを投げうったソインとそんなソインを最後の最後に救うユンギョム、クドクを認めるテヨンの祖母、女性部会(?)のメンバーたち、クドクが歩けば歩くほどその輪が広がってゆくストーリーが心地いい。

ソインの側近、マンソクを演じたイ・ジェウォン、笑わされて最後泣かされます。
やっぱり、韓ドラ、脇もすごい。