「梨泰院クラス」視聴完了。
「愛の不時着」と違って、すぐにリピートをする気にはなれないけど、面白かったし、なるほどこれだけの話題になる優れたドラマだったと納得もできます。(上から目線)
この「梨泰院クラス」は、「財閥」と「負け組」との真向からの戦いを描くドラマでした。
パク・セロイ(パク・ソジュン)の仲間は、自らの刑務所時代の弟分、トランスジェンダーのシェフ、ソシオパスのマネージャー、アフリカ系韓国人のトニー、そして「長家」の庶子グンス(途中から父の元に行くけど)、と枠からはみ出た人達の集まり。
そのいわゆる「負け組」が一店舗の「居酒屋」から「長家」を買い取るまでに成長するサクセスストーリーだったのですが、途中明かさせるかつてのいじめられっ子ホジンがファンドマネージャーになっていたり、セロイ父を尊敬していた「長家」の専務と通じていたり、せこい金貸しばあさんが不動産王だったり(トニーの祖母でもあった)と、「実利的背景」がサプライズで差し込まれ、「根性」やら「信念」やらだけではないぞ、という「説得力」がドラマの面白さをUPさせていました。
韓国は未だ「財閥」がGDP(国内総生産)の半分以上を占めているとか。
その「財閥」は世襲が当然の世界で、猛勉強して「大企業」に就職しても、トップには登りつめることはできず、かといって「上下」もゆるぎなく、その分断は強固、らしい。
(かといって、「大企業」と「中小企業」の違いは歴然で、それも完全「勝ち組」「負け組」に分かれてしまう、らしい)
「ナッツリターン姫」はなるべくしてなったわけで、その「ナッツリターン姫」の男性バージョンともいうグンウォン(アン・ボヒョン)は、最高のクズ野郎(上手かったと思う)でした。
その父チャン・テヒを演じたユ・ジュミョンは鳥肌ものの演技で、これでもかとセロイを痛めつけ、最後は死を目前にした負け犬になるという徹底さでした。(救いがないのが韓ドラの特徴)
セロイの成功をどう説得力ある形で描くかが、このドラマのポイントだったと思うのですが、セロイは「人情」「正義」を重んじ、頑固ながら才能ある人々の登用ができる柔軟な側面を持つ人で、人を見る目がある人でもありました。(「投資」を持ちかられたときのセロイのためらいと会長(チャン・テヒ)が長男グンウォンを切ると予測したりと、皆の予想に反しセロイのカンは当たっていた)
そして、その賭けに失敗しても、すぐに次の「案」に取り掛かる回復力と発想力、なにより目標を見据えた冷静さは彼の武器でもありました。
彼のそばにいる人が「彼のために何かをするぞ!」という気持ちにさせる、そのインセンティブを与える力もありました。
それは「長家」チャン・テヒが有無を言わさず恐怖で部下を動かす、というハウツーとは真逆だったのです。
セロイは人の意見を素直に聞ける人でもありました。
「長家」を潰す目的で動いていたセロイは、人が集まりその人達を愛おしく思うことで、実は彼自身が変化していったのです。
「企業」は働く人の為にある、という基本を貫く土台ができ、それを全うする力を付けたセロイは「タンバム」を成功に導きました。
それができなかった「長家」は自ら腐敗し、滅びたのです。
そこに韓国の希望を見た人が多数いたはずです。
「梨泰院クラス」は韓国国民の溜飲を下げ、快哉を叫ぶことができたドラマだったのだと思います。