「パラサイト」のチャン・へジンとチョ・ヨジョン


「パラサイト」の美人妻を演じたチョ・ヨジョンを確かめたくってチラッと「ロマンスが必要」を見てみました。(写真はチャン・へジン)
今から約10年前、少しポチャとしていて、美人というよりは「可愛い」感じ。
映画を観ての感想は、とてもいい歳の取り方をしたなあ、と思います。
何といっても(今の方が)グッと洗練されています。

「パラサイト」の限りなく屈折した、したたかで老獪で負のエネルギーを抱えた人達の中での「美しさ」を表したチョ・ヨジョン。
「ロマンスが必要」でも、明るくそしてものすごく素直な女性を演じているのですが、何より健康的なのです。
ポン・ジュノ監督は、その類まれな「陽」を持った女優さんを起用したかったのでしょう。

その対極にいるソン・ガンホの妻を演じたチャン・へジンは、ほんとはもっとスマートでキレイな女優さんでした。(写真上がチャン・へジンの女優としての顔)
なんと16キロも太ったとか。
そんなに太る必要があったのか、とも思うのですが、貧乏家族の「栄養・体・運動」から無縁の生活を強調したかった、のかなと思いました。
要するに、金持ちは自分の身体を考えることができ、運動をする余裕がある、ということです。
これはアメリカ社会とも被ります。(飢餓にあえぐのではない、現代の貧困の典型です)

そのチャン・へジンのセリフ、ソン・ガンホがチョ・ヨジョンを「金持ちなのに優しくて、性格がいい」と言った言葉に「私だってお金があって、こんな家に住んでいたら優しくも親切にも出来る」と返すのです。
それは、本当に真実だと思うのです。
ホントの金持ちは、人を見下さないし、威張らないし、(人に)優しいのです。

なぜなら、満たされているから。
お金のことを考えることもなく(好きなだけ)買い物ができ、好きなところに行けて、そして人から適切に遇される。

このことは結構大事なことだと思います。
お金があるから人から良い待遇を受ける。
良い待遇を受けることによって、心のゆとりが生まれる。
ゆとりが生まれると、人にやさしくできる。

つまりお金があるから人にやさしくできる、ということになるわけです。

あのソン・ガンホ一家の必死さは、ある種、鬱屈したエネルギーを内に秘めていた結果だと思います。
(自分たちはその気があれば)十分な頭脳とやる気はあるのにこんな生活をしているという負の渦をかかえていて、「チャンス」を渇望していた家族だったのです。
兄は高校生に英語を教える能力があり、妹は「絵」を教えているようにも振舞える。
父は高級車を運転でき、母はお金持ちの家の切り盛りをできる能力がある。

「パラサイト」というタイトルで一家に入り込んではいたけど、それぞれに「スキル」はあったのです。

ポン・ジュノ監督の「貧乏であることが能力がないことではない」、というメッセージを感じます。
つまり、金持ちと貧乏の堺の曖昧さ、表裏一体、ということも示唆しているのでしょう。

チョ・ヨジョンもチャン・へジンになるかもしれないし、チャン・へジンもチョ・ヨジョンになれたかもしれない、のです。