ソン・ウェイロン演じたリン・シャオになぜこれほどまでに心惹かれるかというと、彼のキャラクターに不思議なほど母性本能をくすぐられるのです。
そして、リー・ジェンジェンへの「深い愛」と「緻密で大胆なアプローチ」とそれでいて、「酷く不安な心」、そのアンバランスさ。
かなり、複雑な人物で、その特異なキャラクターにも惹きつけられました。
妹を目の前で亡くし心の傷を負う、しかも実の母親が娘の喪失を息子であるリン・シャオにぶつける。
夫婦間がこじれにこじれ、息子を捨てる。
それまで明るく活発な子どもだったリン・シャオは、物言わない本ばかり読む閉じこもった性格になってしまった。
その閉じこもった彼をジェンジェンの存在が勇気づけ、生きる希望を与えました。
子どものジェンジェンがさらわれそうになったとき、必死で悪人からジェンジェンを守り、ジェンジェン父が感動する。
この出来事を後から振り返って、リン・シャオは、「ジェンジェンを守ったあの時に婚約したようなもの」と自分が夫候補に相応しいことをズーチウに言うのです。
おそらく「妹の死」に「ジェンジェンの生」が上書きされ、ジェンジェンの命の恩人になったことでリン・シャオが「生きていい存在」になった瞬間だったのです。
そして、シンガポールでの「母の介護」はまたしても彼の精神を病む起因になります。
「妹」を死なせたと母に言われ、それは母に対する罪悪感にもなっていました。
「罪悪感」故の奉仕、「生きる希望を持てない母」をなんとか立ち直らせる、異父妹の世話をし歯科医になる勉強をするだけの日々。
ただただジェンジェンの元に帰りたい、という気持ちが彼を支えるのです。
帰国してからの彼は、大胆になります。
睡眠障害はあるものの、差し伸べてくれる手があることが彼を勇気づけたのでしょう。
母親に中国で仕事を持ち、もうシンガポールには帰らないと告げて、ジェンジェンに告白する決意をします。
ジェンジェンを押したり、ひいたり、ある意味「泣き落とし」をしたりと「頭脳派的作戦」と言える気がします。
まず、寝ているところに行き、「kiss」。(ジェンジェン目覚めてしまう)
気まずいジェンジェンをひっぱり、エレベーターでの「壁ドン」
「結婚を考えてくれ」とストレートな発言、「ランと別れろ」とも。(このときすでに友人関係になっていたけど)
そして、タン・ツァンとのケンカの後、号泣しているジェンジェンに不意打ち「kiss」
ジェンジェンのどこか幼稚で単純な性格を見抜いているリン・シャオは行動でジェンジェンに変化のスパイスを加える。
ズーチウに嫉妬したと見せかけて、「彼氏」である、という意識をジェンジェンに与える。
リン・シャオが圧倒的にズーチウより勝っていたのは、「恋愛モード」に照れることなく突入できたこと。
見事な作戦です。